暗い窓の外にみずみずしい果肉のような赤い肉塊が張り付いていたんです。とにかくそれが嫌で私はそれを剥がしたくて窓を叩くのですが一向に剥がれる気配はありません。それどころかもし肉塊が窓を叩き割って侵入してきたらどうしよう、という不安ばかり湧いてきます。窓を叩くのは危険なので早くいなくなれと念じながら肉塊を見つめていると、肉塊は呼吸をしているかのように収縮し蠢いています。とても気持ち悪いです。まばたきをした一瞬でほんの僅かに窓の上のほうに這い上がってきています。見間違いなどではないです。肉塊が這った証拠にヌメヌメとした粘液が残っています。ヌルヌルギタギタで淫猥な!よくもこんなものを晒してくれて恥ずかしいと思いなさい!最低です。こんなふうに動くようじゃあとても眠れません。私は24時間まばたきすら許されずこのグロテスクな存在を監視しないといけないのでしょうか。そんなのとても耐えられません。誰か助けてください。どうして私がこんな仕打ちを受けないといけないのでしょうか。神様は間違っています。隣の家のおじさんだってとてもいやなしとだし母も兄も父も間違っています。先生だって間違っています。いつだって全部私のせいにして。肉塊のことだってどうせ私のせいだと言うのでしょう。
ああいけない、もうとっくにいつものお薬の時間を過ぎていました。目を離した隙にどうなってしまうのか考えたくもありませんが、私は毎日薬を飲まないと先生に怒られてしまうので肉塊の監視を一時停止するしかありません。
起きたら朝日がきれい。
肉塊、いなくなってました。
よかった。