リュシアンが可愛がられるだけの話

出てくる人

ヘイタン
いわゆる攻め。リュシアンの主でリュシアンを自分の部屋に呼び出して遊ぶのが数少ない楽しみ。リュシアンを愛玩生物だと思っている。
リュシアンのことはだいたいなんでもお見通し。

リュシアン
いわゆる受け。ヘイタンに愛と恐怖と複雑な感情を抱いているが基本的には好き。怒らせると叩かれるので言いたいことはあまり言えない。
だいぶ調教済み。

いつものようにあの人の部屋をノックする。不機嫌そうに返事が返ってきてしばらくするとドアが開く。そして部屋に入るなり抱きしめられた。

「ひゃっ……!?ど、どうしたんですか」
「別にどうもしない」

淡白に答えた彼は僕をそのまま離さない。あの人の決して厚くはない胸板に顔を押しつけるような形でぎゅっとされている。
僕を背中から包みながらも片手で髪をなでられる。少し乱れた髪を毛先からほぐすように優しくゆっくりと。
……心地良い。それだけじゃない、あの人の匂いに包まれて体温を感じていると下腹部のあたりがゾクゾクする。優しくされてるのにこんな下卑た気持ちを感じてしまうなんて僕はおかしい。

「リュシアン、私のこと好きか?」
「……!は、はいっ……!好きです……」
「どのくらい」
「他の誰よりも1番……、僕が好きなのはあなただけです」
「へぇ……」

顔は見えないがあの人が満足げな表情をしているような気がした。……本当は、僕も好きだと言われたい。言われたいのに、言えない。

そんなことを考えているとあの人はすっと体を離して僕の顔を覗き込んだ。
鋭い光を放つ金の瞳に見つめられる。……恐ろしいのに美しい。ずっとこの視線を独り占めできたらいいのに。

「リュリュ、私がお前を好きじゃないはずがないだろう?……二人きりのとき以外は”1番”とは保証できないが」

そう言ってあの人はいつものように意地悪く笑みを浮かべる。
ああ、この人にはきっと僕の考えてることなんて全部お見通しなんだ。