面白くない話

「ああ、別に面白くもなんともない話なんだけどね」
赤い髪を一つに括った彼はそのまま続けた。

前に俺が人を殺す姿が何より美しいって変に慕ってくるやつがいてさ。なんか面白かったからそのまましばらく一緒にいたんだよね。こき使われてくれて便利だったし。まあ大したことはできなかったけど。
でさ、俺がお楽しみの最中、横で眺めてうっとりしてんのそいつ。物好きだよねぇ。殺しを見るのが好きじゃなくて、殺しをしてる俺が好きなんてね。
ええとなんだっけ?あーそうそう、
「たまにはアンタもいかが?」
って誘ったらそれは断るんだよアイツ。意味分かんないよねぇ。
「自分の手を汚すのはイヤ」だなんて。
それでさ、なんか頭にきたからちょっと虐めてやろうかなと思ったら必死に命乞いしてくんの。もう頭にくるの通り越して冷めちゃった。せっかく綺麗なものを1番近くで見れる機会だっていうのにそんな普通のニンゲンみたいな反応すんだもん。ほんとつまんない。あー結局これも普通のヒトなわけね、と思ったからその場でやっちゃった。いつものうっとりした顔なんて1ミリもせずギャーギャー喚いてたよアイツ。最期まで普通なんてほんと最低。

「ね、面白くないでしょ?」
話し終えた彼はニコニコしながらこちらに問いかけてくる。口の端を釣り上げ目を細めて笑っているよう見えるが、その瞳はひどく無感情で寒気がした。