空想の外側にある本の内側から外側へ
「よくもまあ悪びれず来れたものだ」幾度目かのため息。■■はテーブルの上の一冊の本の表紙を撫でる。こちらが何か言うより先に■■は口を開く。「過去は本のようなもの」その本は簡素な装丁に、認識することができない不可思議なタイトルをしていた。「全て…
文章 白昼夢
そう囁いて、終わらせて
「目は覚めた?」「悪い夢を見ていただけだよ、きっと」懐かしい声、かたち。横たわる体を覗き込むその顔は、何度も思い描いたそれそのもの。頬に触れる手は冷たかった。「だいじょうぶ」「何も苦しいことなんてないんだよ」「カミサマが、いるから」ずっと、…
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エンドロールの最果てにて【B】
懲りずにまた来たのか。誰も入れないようにしてるはずなのにいったいどんな抜け道を使っているんだかね。まあいい。今はお前に構うつもりはない。忙しいのでね。勝手に見ていればいい。どうせすぐに飽きるだろう。椅子の周りに散らばってる物?これは□□の成…
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エンドロールの最果てにて【A】
最後の一人も振り返らずに立ち去り、開いた門は役目を終えて閉じましたとさ。おしまい。これでこの世界はおしまいなんだよ。門は二度と開かないしここには誰もいない。ここの外だってもうない。皆正しいかたちに戻して還してやった。だからもうここにいる必要…
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想い出星をさがして
いつか昔に聞いたおとぎ話。年の終わりには人々の思い出からこぼれ落ちた星が降り、その星に祈れば願いが叶う、と。誰に伝えられたかもわかりませんが、わたしはそれを知っていました。◆◆◆無数の本の山と数本のペンと白紙のノートが置かれた机。その中に一…
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白の灰
古ぼけた埃塗れの狭い部屋。薄闇の中に■■と□□だけ。薄汚れてなお鈍い光を放つ柔らかな絹のような髪。病的なまでに白い肌。そのまぶたは閉ざされ、■■を見ることはない。暗闇の中でもその白はより一層際立って見えた。壁にもたれた□□は動かないまま。生…
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